~泣き時計。~ 今から随分前の事。 いつもの朝、3人乗り自転車で、長女は前かご、次男は後ろのイスに座らせ、子供達を預けに保育所に向って、閑静な住宅街を縫うように颯爽と走り抜けていた時の事、どこからともなく、鳥の鳴き声がした。ここら辺では聞いたことない鳴き声だったので、強めに左右のブレーキを握った。「ギューギュー」と自転車の大きな鳴き声が住宅街に響き渡った。自転車が止まる直前、前のめりになった身体が真っ直ぐな姿勢に戻る瞬間、ペダルに乗っけてた両足の裏をベッタリと地につけた。私達が乗った自転車はアスファルト舗装された道の真ん中で止まった。私は、耳を澄ました。そして後ろを振り向いた。鳴き声は、少し通り過ぎたところにあるゴミ集積所から聞こえている。 「鳥が泣いてるね。」と私の背後から次男。 「そうだね~たぶん、ゴミ捨て場の方だよ。」と私。 長女は無反応だった。 3人とも自転車に乗ったままで、私の足の裏全体でアスファルトを交互にゆっくり蹴りながら転ばぬ様に注意深く自転車をUターンさせ、ゴミ捨集積所に近付いた。 その日は、粗大ごみの日だった。集積所には、昔流行ったアニメのシールが所狭しとベタベタ貼られた黄緑色の3段カラーボックス、子供が部活で使ってたのであろう、持ち手部分のラバーがボロボロ剥がれる程に使い込まれたテニスラケット数本、また、主を失ったいかにも高級そうなガラス製の灰皿たち等が、うず高く積まれていた。それらの品々に交じって、鳴き声の主たちは泣き続けていた。私は腕時計を見る、午前8時ちょうどだった。「だから鳴いてるんだ。」と思った。「このまま見捨てるにはもったいないなぁ~」しかし、勝手に持ってけば罪になること百も承知。どうしょうかと思案してたまさにその時、「私たちまだ鳴ける!捨てないで!」と、この小鳥たちに泣いて頼まれてしまった。それっきり彼らは黙り込んでしまった。おそらくこれが8回目のお願いだったのだろう。私は、辺りをキョロキョロ、誰もいない。雨もそろそろ降りそうだった。仕方がないので我が家で一時保護することにしてやろう。 あの日から随分経ったが、小鳥たちは未だに私の部屋から飛びたたず、正確に時を鳴き声で教えてくれる。「お~い、お前ら!いつまで居るんだよ~、早く飛んでけよ~」 https://striy48sattopanel.jimdo.com コンロ専用パネル
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