「プオーーーーー 三重奏 先日この縦笛小…」

プオーーーーー
三重奏

先日この縦笛小学生の写真を見て遥か昔の出来事をふと思い出しました。

かれこれそれは私がまだ小学生の頃の思い出
その日というかその夜、良い子はもう寝静まったであろう少し遅い時間。
良い子ちゃんの私は母に叩き起こされたのであった
「大変、起きてえぇーー火事！かーーじーーーいぃぃ」
もっぱら普段は低血圧、寝起きは別人格、殺人鬼などと揶揄されている私だったがただならぬ空気でいっぱつで目が覚めた
当時我が家は11階建ての社宅の6階に住んでおり、
私はカーテンを開け外の様子を見た　
カーテンを開けてのぞいた景色はそれまで見たことの無いオレンジ色に染まっていた
こともあろうか私は腰を抜かすという体験を初めてしたのである、足が産まれたての子鹿の様にフガフガと震え力が入らない。
お母さんが言う「お兄ちゃんと隣の棟に住むおじいちゃん家に逃げなさい」
一刻も早く逃げなければ
そう思い私は逃げる用意をしなければと思った
逃げる用意？なんだそれはと思ったあなたはきっと賢い人なのだろう
小学生の私は少々アンポンタンな所があり、外にでるならパジャマから着替えて出なくてはならないと思ったのである
困った律儀な日本人である
そうだ逃げる時に誰かに会うかも知れない、あのお気に入りの服で逃げよう
お気に入りの服というのは、当時私が世界で1番イカす服と思ってやまなかった緑色のトレーナーで前面にピンクの文字でデカデカとYOUとプリントしてある服だ。そして両肩の所にチャックがあり開けると少し布がでて袖が伸びる奇抜なデザインの服だったが当時の私は真剣に世界で1番オシャンなお気に入りの服だったのである。

よし、それを着ていこう
開けたカーテンからオレンジ色が差し込む部屋で慌てて着替えた
玄関で兄が待っていて一緒に逃げた
エレベーターで逃げるのは危険なので螺旋階段から逃げようという事になった
螺旋階段に出ると住人が皆んな慌てて駆け降りていた
私も早く逃げなければ、早く早く焦って転けそうになる
怖くて泣きそうだ
私の後から兄が追いかける
…
さっきから兄が私に何か言っている
だが私はそれどころではない
早くにげなければ
ん？兄の様子がおかしい、笑っている、それもヒィーヒィーお腹を抱えて笑っている
私の名を呼び「逆！逆！」と言っている
何が逆なのかさっぱりわからない、ひょっとして下ではなく、上に登れということか、炎は上に登っていく、お前はバカか、こんな時に笑うとはどうしようもないバカだ
無視をし心の中で悪態をつき先に逃げた

そして命からがら隣の棟のおじいちゃん家に逃げ込んだ

後から兄が到着した

「逆〜って」
「ぎゃく〜ぅヒィーヒィー」と言ってまだ笑っている
バカも大バカだ相手にできない

興奮しすぎて鼻水が垂れた
おっやべと拭ったが一滴落ちた、
いや違う、鼻水ではない鼻血だ
慌てた
そう今着ているのは世界一オシャレでナウイ服だ
血がついたのではないかと思い確認した

YOUの文字が
逆さまになっていた

そう、私は服を逆さまに着ていた　　
トレーナーの首が腰に、トレーナーの裾が首に

兄が言った
「だから逆だって〜」

はよ言えい

そう

お前が1番バカだった
っていうお話でした

長々とくだらない話にお付き合いくださりありがとう😊